6月18日に国会が閉会しましたが、今国会では、注目すべきいくつかの法案が成立しました。
主なものではまず、天皇の退位を1代限りで認める、天皇の退位に関する皇室典範特例法が、自由党を除く与野党全会一致で可決成立しました。退位が実現すれば、江戸時代後期の光格天皇以来、約200年ぶりとなります。
次に、いわゆる共謀罪、テロ等準備罪が与党及び維新の会の強行採決で可決成立しました。
共謀罪とは、2人以上の人が犯罪を行おうと話し合い、合意することで成立する犯罪です。つまり、実際に犯罪を犯さなくても、計画の段階で罪になる、ということです。
私は中央大学法学部で刑法を学びました。「実行行為がなければ犯罪は成立しない。」というのが、歴史的に確立された刑法の大原則です。明らかにこの刑法の大原則に反します。
そもそも、犯罪の合意だけで犯罪が成立し、しかも、言葉を直接交わさないで「暗黙・黙示の合意」でもよい、いわゆる「目くばせ」でも合意が成立する、としていますので、果たしていかなる場合に合意が成立したのか、極めて曖昧です。警察による恣意的な運用を招く可能性が十分あり、冤罪を生む恐れが大いにあります。表現の自由などの基本的人権を侵害する、憲法に違反する法律と言わざるを得ません。私は司法書士で法律家です。法律家として断固反対ですが、残念ながら成立してしまいました。
他に、改正民法が成立し、民法制定以来、120年ぶりに、債権法の部分が抜本的に見直されました。インターネットの普及など、時代の変化に対応し、消費者保護も重視しています。
改正の柱の一つが、当事者間で特に利率を定めていない場合に適用される「法定利率」の引き下げです。現在年5%で固定されている法定利率を年3%に引き下げ、3年ごとに見直す変動性も導入します。超低金利が続く現状に合っていないためです。
他に、インターネット通販などの事業者が示す、いわゆる「約款」の規定も新たに設けられました。ネット通販で買物する時、ほとんどの人は、長文で細かい約款をほとんど、というか、全く読まずに「同意する」をクリックして契約しますが、消費者の利益を一方的に害する条項は無効になります。トラブルも多く、泣き寝入りするのを減らすのが狙いです。
他に連帯保証人の制度も変わりますし、消滅時効も変わります。
刑法も改正されました。先週16日、改正刑法が全会一致で可決成立し、110年前の刑法制定以来、性犯罪に関する規定を初めて大幅に見直して厳罰化しました。
改正の柱は「親告罪」規定を撤廃したことです。強姦罪や強制わいせつ罪で加害者を起訴する際に、これまで必要だった被害者の告訴が不要になります。被害の潜在化を防ぐ効果が期待されます。心身に深い傷を負った被害者は、告訴手続きで事件を振り返らざるを得ません。その心理的負担が、被害が潜在化する一因になっていました。
加害者側の弁護士が告訴をやめるよう執拗に迫るケースもありました。法務省によると2013年に送致された強姦事件888件のうち、告訴の取下げなどを理由に不起訴となったのは21・8%、強制わいせつ事件3354件では29%になります。親告罪規定が、多くの性犯罪被害者に泣き寝入りを強いてきたことを物語っています。
非親告罪となったことで注意しなければならないことは、被害者のプライバシーの保護です。周囲の目や報復を恐れて、事件化を積極的に望まない被害者もいます。裁判での証言などで、被害者がさらに傷つく2次被害を防ぐためにも、捜査や裁判でより細心な注意が必要です。
他にも、強姦罪は「強制性交等罪」に罪名が変わり、女性に限定されていた被害者に男性も加えられました。
「懲役3年以上」だった法定刑の下限は、強盗罪と同じ「懲役5年以上」に引き上げられました。被害者の心身に深刻なダメージを与える性犯罪が「なぜ物を奪う罪より軽いのか」という疑問が被害者以外にも数多くあり、国民の被害感情に合わせ、法定刑を適正化したともいえます。
少し長くなってしまいましたが、今日は司法書士の法律教室になってしまいました。ゴルフの話ばかりしないで、たまには専門の法律の話をすればよかったかな、と終わる間際になって後悔しています。
最後になりますが、会長杯のゴルフの結果です。スタートホールのロングでいきなり10、2ホール目はダボ、そんなことで前半ハーフは何と53。後半は頑張りました、パーを5つ取り、43。トータル96で、何とか会長の面目を保つことが出来ました。3週連続80台を狙いましたが、ゴルフはそんなに甘くありません。と言うことで今週は残念ながら大台を入れることが出来ませんでした。優勝は篠原敏さん、2位は先週入会した長田秀夫君、3位は浜整之介さんという飛ばし屋3人で、まずまず順当な結果でした。ニコニコボックスの発表が楽しみです。
「会長は快調ではありませんでした。」
Last Update:2017年08月04日