4月18日 会長挨拶

 私は読書、特に小説を読むことが好きです。1年に50冊くらいのペースで読んでいると思います。好きな作家のひとりに「吉村昭」がいます。膨大な作品量がありますが、かなりの作品を読んでいると思います。事実や残された資料を丹念に調べ歩いて小説にするという作風の作家です。2006年死亡、自宅で療養中に延命治療を拒み、自らカテーテルポートの針を引き抜いての尊厳死であり、遺言によってその死を焼骨まで秘匿したことも報道されていました。奥さんも作家で津村節子です。「紅梅」という夫の闘病生活と死を描いた作品が昨年出版され、今年になって私も読みました。
 「三陸大津波」や「関東大震災」という災害を扱った作品群もあり、震災後は注目されて読まれているようです。昨年の震災後に「三陸大津波」を何年かぶりに再読しましたが、今度の震災を見て大変参考になる作品です。吉村作品の中で私のお気に入りは「熊嵐」という作品です。ヒグマが人間を襲って、特に妊婦さんを好んで食べたというすごい物語ですが、事実に基づいた実話だということです。
 この吉村昭の膨大な作品群の中に、監獄という作品群があります。代表作は「破獄」でしょうか? 昭和11年青森刑務所、昭和17年秋田刑務所、昭和19年網走刑務所、昭和23年札幌刑務所と4回脱獄を実行した無期刑囚の物語です。その中で保護司を扱った作品もいくつかあります。「仮釈放」という作品では、元教師で妻殺害の罪によって無期刑となった主人公が、16年後に仮釈放になる時からを描いた小説だったと記憶しています。保護司の暖かい目に見守られながら社会復帰をしていく内容です。他にも「見えない橋」「山茶花」という小説も保護司を題材にしています。


Last Update:2012年04月18日